形容詞を使わない大人の文章表現力

どんな本?

日本語学者の石黒圭さんが、文章の表現力を高めるために、形容詞を使わずに描写する方法をまとめた本。

各所に次のような問題が出され、その解答例をもとに説明を深めています。

※次の①~⑥の食べ物の食感を描写するときに共通して使われるオノマトペを挙げてください。

①パンケーキ、ロールケーキ、オムレツ
②ラスク、クッキー、天ぷら
③エビ、鶏もも肉、ソーセージ
④納豆、オクラ、とろろ
⑤ベーコン、唐揚げ、ピザ
⑥ドーナツ、ニョッキ、水餃子

このような問題が多数あり、この問題の答えを一通りチェックするだけでも表現力=描写力が上がるでしょう。

所感

表現力豊かな文章を書きたいという人には良い教科書になります。

また、「自分の話って面白くないな・・・」、「自分の気持ちをうまく伝えられないな・・・」と感じている人にも参考になるでしょう。

映画を観て感動した、本を読んで感動したというときに、「おもしろかった」「すごかった」という小学校低学年レベルの感想しか出てこない私にとっても参考になるのが次の記述です。

●形容詞は出来事の結果として生じた感情なので、その感情を表したければ、結果の原因となった出来事そのものを描くしかないのです。

形容詞はたしかに便利な言葉ですが、「おもしろい」「すごい」「かわいい」などの形容詞が頻繁に出てくる文章には、幼稚な印象を持ってしまいます。

表現力が豊かというのは、具体的に説明(描写)する力があるということです。

そのポイントは、形容詞ではなく、動詞を使うこと。

「マッサージをしてもらって、肩が気持ちよかった。」

という文章を、動詞を中心に書くと

「マッサージをしてもらって、肩の筋肉が緩んで、血行が良くなった」

などと書くことができます。

これ以外にも、本書では「気持ち良い」という形容詞を使わずに言い換える方法が例文とともに10以上説明されています。

・肩のしびれがスッキリした。

・肩の重さがマッサージ前の半分以下になった。

・肩甲骨はがしのストレッチが効いた。

・肩の可動域がずいぶん広がった。

描写力を上げるには、結局のところ、たくさんの事例に触れるのが一番なので、描写の具体的事例集として読んでも身に付けられることはたくさんあります。

石黒圭さんの本で以前『「うまい!」と言わせる文章の裏技』という本を読んだことがあります。

そのときは、『この本読んでも「うまい」と言われる文章は書けないよなあ』とガッカリした記憶があったのですが、本書は参考になりました。

ピックアップ

●「かわいい」のような形容詞は便利ではあるのですが、便利であるがゆえに、「かわいい」に極度に依存してしまい、語彙が貧困になる原因になります。したがって、私たちが表現力の向上を考える場合、こうした便利な表現をNGワードとして避けるようにし、「かわいい」に代わる言葉を探すという地道な努力が必要です。

●形容詞は出来事の結果として生じた感情なので、その感情を表したければ、結果の原因となった出来事そのものを描くしかないのです。

●「否定表現」と「否定的表現」は違います。「否定表現」は「~ない」がつく表現、「否定的表現」は意味がネガティブな表現です。

否定表現で「ひとひねり」することで印象的な文章になる

お酒は好きだ ⇒ お酒は嫌いなほうではない

目次

第1部 大雑把な発想を排する 直感的表現から分析的表現へ
 第1章 あいまいさを避ける[限定表現](「すごい」「おもしろい」のあやふやさを避ける)
 第2章 個別性を持たせる[オノマトペ](「おいしい」「痛い」のありきたりを避ける)
 第3章 詳しく述べる[具体描写](「かわいい」「すばらしい」の手軽さを避ける)

第2部 自己中心的な発想を排する 主観的表現から客観的表現へ
 第4章 明確な基準を示す[数量化](「多い」「さまざま」の相対性を避ける)
 第5章 事情を加える[背景説明](「忙しい」「難しい」の根拠不足を避ける
 第6章 出来事を用いる[感化](「はかない」「せつない」の感情表出を避ける)

第3部 ストレートな発想を排する 直接的表現から間接的表現へ
 第7章 表現を和らげる[緩和](「嫌いだ」「まずい」の鋭さを避ける)
 第8章 裏から迫る[あまのじゃく](「くらだらない」「つまらない」の不快さを避ける)
 第9章 イメージを膨らませる[比喩](抽象性を避ける)

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