トム・ハンクスが好きです。今回はトム・ハンクスの若かりし頃の名作「キャスト・アウェイ」を久しぶりにAmazon Primeで見返して、「やっぱいいなあ~」と思ったので、改めて感想をまとめてみたいと思います。

ロバート・ゼメキス監督×トム・ハンクス主演というのは、1995年日本公開の「フォレスト・ガンプ」以来2作目。

フォレスト・ガンプも良かったですが、私はこちらのキャスト・アウェイのほうが面白かった。

ロバート・ゼメキスがこの映画で伝えたかったことは、

「どんなに辛くても生きろ!最後まであきらめるな!生きてさえいれば新たな展開が待っている。あなたは守られているのだ!」

ということではないかと感じています。

この映画はハッピーエンドなのかそうでないのか、意見が分かれるところですが、私自身は未来への可能性を心に残すという意味でハッピーエンドだと思っています。

ちなみに、私の映画記事はネタバレ満載です。ネタバレ警報を発しておきますので、ご了解の上お読みください。

キャスト・アウェイのあらすじ

2000年のアメリカ映画。トムハンクス演じるフェデックス社の技術者チャックは出張途中で飛行機が墜落し、無人島に漂着します。

動物すらいない無人島でたった一人で、孤独に耐えながらサバイバル生活を4年間続けることになりました。

故郷にいる恋人への想い。そしてウイルソン社のバレーボールを友達に見立てて、孤独にやられそうになる精神をなんとか保ちます。

しかし島からは出られないと悟り、一度は孤独のまま死を迎えることを覚悟しました。

そんなある日、波が仮設トイレの板を運んで島に打ち上げられているのを発見します。

それをイカダの帆にすることを思いついたチャックはイカダを作り、島からの脱出を試みました。

しかし数日の航海でイカダはボロボロになり、チャックは力尽きて、死を覚悟します。

そのとき貨物船が現れ救助されたのです。

故郷のメンフィスに帰還し、恋人と再会するのですが・・・

キャストアウェイの感想

本編143分のうちなんと80分はトムハンクスの一人芝居のシーンという異例の映画でした。

画面の向こう側に意識を持っていかれる傑作です。

143分の映画というと、「ちょっと長いな」という印象を持つ人が多いのではないでしょうか。

しかも、143分のうち、約80分はトム・ハンクスの無人島でのサバイバル一人芝居。他には誰も出て来ません。

にもかかわらず、最初から最後まで引き込まれっぱなし。

中だるみを感じることも一切なし!

無人島に漂流した当初のメタボなトム・ハンクスから、無人島生活4年がたった原始人のような風貌のトム・ハンクスの姿のギャップに驚きます

この撮影のために、トム・ハンクスは1年で22㎏減量し、ヒゲ、髪の毛を伸ばしっぱなしにして、原始人スタイルに変身したようです。

トム・ハンクスって演技をしているという感じではなく、「なりきっている」という感じがするのです。

トム・ハンクスは近年では「天使と悪魔」などダン・ブラウンの小説を原作にした映画でロバート・ラングドン教授役を演じましたが、もし映画館を出た後、トム・ハンクスに会ったとしたら、「あ、トム・ハンクスだ!」じゃなく、「こんにちは!ラングドン教授!」ってなりそう。

それくらい「なりきり役者」だと思います。

次に見どころをいくつか挙げてみます。

キャストアウェイの見どころ・印象に残ったシーン

■飛行機に乗る前のシーン

主人公のチャック(ハンクス)が出張のため空港に自分が運転する車で向かいます。空港に着いて車から降りるとき、恋人のケリーに車中でクリスマスプレゼントを贈ります。しょーもないプレゼントです。

ケリーは助手席から運転席に移動して帰ろうとします。

しかし車のキーが見当たりません。チャックが持っていってしまったようです。

チャックを呼び止めて車を降りるケリー。

するとチャックは車のキーとともに、プロポーズの指輪をプレゼント!

時間差サプライズ。芸が細かい!

ケリーは感激します。

しかしこの後乗った飛行機が墜落してしまうのです。

■無人島で自力で火を起こしたシーン

飛行機が墜落して無人島に漂着したチャック。生きていくためには水と食料が必要です。

椰子の実や雨水で水分を確保し、カニや魚を捕まえて食料を確保しようとしますが、カニを食べるにもやはり火が必要。

しかし、道具は何もありません。

チャックは原始人よろしく、木をこすって摩擦熱で火を起こそうとします。

何度も失敗しながら、手をケガし、それでもあきらめずに火を起こすことに成功します。

いっときの希望を得た喜びが爆発するシーンです。

古代では火を「神」と崇めた民族をいますが、このシーンを見ると納得してしまいますね。

火に偉大な力を感じました。

■ウイルソンが海に流されたシーン

飛行機の墜落でチャックが無人島に漂着したように、飛行機に積まれていた宅配便の荷物もいくつか漂着。

その中にウイルソン社のバレーボールがありました。

手をケガしたときに握ったバレーボールに血の手形がつきます。

それを顔に見立てて、目と鼻と口を描き、「ウイルソン」という名前を付けて、チャックはウイルソンに話しかけるようになります。

(もちろん独り言)

人間やっぱり一人では生きていけないんですよね。

物理的にではなく、精神的に。

ウイルソンが心の支えになるわけですが、あるときチャックは感情の高ぶりからウイルソンを海に投げ込んでしまいます。

しかし、すぐに反省し、ウイルソンを探しに海に飛び込みます。

「ウイルソーン!」とチャックが叫ぶシーンは迫真です。

本当に友人を失ってしまいそうな不安がスクリーンからにじみ出ています。

人ではなく、物相手にもこの演技。トム・ハンクスの感情表現力はすごいです。

■無人島で荷物を開封するか迷うシーン

無人島に漂着した宅配便の荷物から使えないものはないかと次々と開けていくのですが、あるダンボール箱だけ、開けようとして迷い、結局開封せずに置いておきます。

ココ、何気なくスッと流れていきますが、めっちゃ大切な伏線です。ラストでこの意味がわかります。

■帰還後のパーティが行われたテーブルでライターの火を見つめるシーン

奇跡的な生還後、友人たちがパーティを開きます。

彼らが帰った後に、テーブルに並べられた豊富な食事の残りを見つめるチャック。

そこには大きなカニも用意されていて、カニの足を手に取り、その後、ライターをカチカチとやって火をつけ、その火を眺めます。

無人島ではカニをとって食べるのもあんなに大変だったのに!ここではこんなに簡単に手に入る。

文明社会に戻ってきたという実感と、無人島での生活がよみがえるチャックの表情に引き込まれます。

■ケリーに懐中時計を返したシーン

再開した恋人のケリーは、チャックが死んだと思い、他の男と結婚して娘がいました。

飛行機事故に遭って、4年間という月日が流れれば誰だってあきらめるでしょう。

ケリーの家に訪れたチャックは、遭難前にケリーからプレゼントされた懐中時計を返します。

その懐中時計と、その中に貼ってあったケリーの写真はチャックが無人島で生き延びる目標を与え続けてくれたシンボル。

それをケリーに返します。

「君の家族の物だから」と言って。

懐中時計はもともとケリーがおじいさんから譲りうけたものだったのです。

ケリーの新たな家族のために、自分が持っておくべきではないと思ったのでしょうか。

チャックなりのケリーとの決別の表現でした。

■ケリーを家に帰したシーン

チャックが帰ろうとすると、雨の中、ケリーはチャックを追いかけます。

ケリーは自分の本当の気持ちを抑えることができませんでした。

雨の中、熱いキスを交わす2人。

「お、このまま連れ去ってしまうのか!旦那と娘を捨てて、チャックとの人生を選ぶのか!?」

どういう展開にするんだろう?とドキドキしましたが、チャックはケリーに言います。

「君は家に帰るべきだ」

こうしてチャックはケリーを失います。

無人島から脱出できないと悟った時に1度ケリーを失い、奇跡的に再開した後、もう一度ケリーを失ったのです。

もし、あのシーンで、チャックがケリーを連れて行っていたら、安っぽい二流の昼メロみたいになっていたでしょう。

何かを破壊して自分の幸せを求めるのは良くないというメッセージを受け取りました。

最後のシーンの意味とは?

かつての恋人ケリーと別れ、チャックは無人島で開封しなかった荷物を、送り先に届けます。

しかし、不在だったため、次のメモを残して立ち去ります。

This package saved my life. Thank you.

(この荷物で僕は救われました)

なぜチャックはこのように思ったのでしょうか?

しかも開封していないわけですから、荷物の中身に助けられたという意味ではありません。

そしてちょっと前にも言ったように、なぜチャックは無人島でこの荷物だけ開封しなかったのでしょうか?

これに関しては、

「生きるか死ぬかの瀬戸際で、中身を見ずにいられるわけがない」という意見があります。

確かに、他の荷物は開封して、「ウイルソン」やスケートシューズ、ドレスなどをサバイバルに利用しています。

だから、この荷物だけ開封しないなんて、「そもそも設定自体がおかしい」という意見です。

これに関しては、アメリカにおける「ある背景」を知らなければ理解できません。

チャックが無人島で荷物を開けていくシーンをよく見ると、最初はこの荷物も開けようとしているのです。

しかし、思いとどまります。

そして、荷物の外箱にスタンプされたあるシンボルを気にします。

そのシンボルとは「羽」。

こんな感じの羽が2枚、荷物の外箱にスタンプされていたのです。

この羽を見て、何をイメージしますか?

そう、天使です。

アメリカには天使信仰というものがあって、ある調査では、アメリカ人の半数以上が「自分は守護天使に守られている」と信じているのです。

つまり、この羽がスタンプされた荷物を見たときに、チャックは守護天使の存在に思いを致したからこそ、その荷物だけ開封しなかったのです。

実はこの「羽」が外箱にスタンプされた荷物は映画の冒頭にも登場しています。

そして、最後の最後、チャックが女性の乗ったトラックを見送るシーンでも、トラックの後部に羽のイラストが描かれています。

チャックが無人島での極限の孤独なサバイバルに耐えることができたのはなぜなのか?

そして、一度は自殺を試みたけれど、その後に「ただ生き続けよう」と思い直した理由は何なのか?

無人島で自殺に失敗したときのことを、チャックは生還後に友人にこう語っています。

「温かい毛布」が心を包んだ

つまり、温かい毛布とは、守護天使のことでしょう。

チャックが極限の孤独なサバイバルに耐えることができたのは、恋人ケリーの写真、ウイルソンの存在だけではないのです。

それ以前の根本思想として、「自分は守護天使に守られている」という想いがあったのです。

ロバート・ゼメキスのメッセージとは?

最初に書きましたが、もう一度。この映画に込めたロバート・ゼメキスのメッセージとは

「生きろ!最後まであきらめるな!生きてさえいれば新たな展開が待っている。あなたは守られているのだ!」

ということでしょう。

最後はケリーと結ばれず、アンハッピーな終わり方と感じる人が多いでしょう。

しかし、無人島で試練に耐えたことで、波がイカダの帆になるものを運んできたように、ケリーとの別れを乗り越えることで、新しい展開が始まるということです。

チャックの新しい物語がスタートする余韻を残して映画は終わります。

ロバート・ゼメキスは、この映画以前にトム・ハンクスと組んで撮った映画「フォレスト・ガンプ」でも最初に羽が舞い降りてくるシーンを撮っています。

ロバート・ゼメキス自身が守護天使信仰者なのかと思ってしまいました。

心地よい余韻の残る作品です。