アレックス・ガーランドの監督第1作「エクス・マキナ」のネタバレ考察です。

エクス・マキナは「AIがどこまで進化するのか?」とか「人間がAIに恋をする」とか、そんなお花畑な内容をテーマにしているのではありません。

レビューの中には、「AIが人間に危害を加えたり、自分自身で改造しないようなプロトコルを組み込んでないのはおかしい」という爆笑もののレビューもありますが、そんなことをしたら、この映画のテーマが表現できません。

エクス・マキナのテーマは

人類は滅びるべきだ。それを受け入れなければならない。

ということです。

それはアレックス・ガーランドのインタビューでも表現されています。

「エクス・マキナ」が公開された直後のインタビューで彼はこんなことを言っています。

人間はこの星で滅びるんだ。それは環境破壊のためかもしれないし、太陽系や太陽で起こる変化のためかもしれない。でもそれが起こるとき、われわれは決してワームホールを通り、別の銀河に行って、古くからある生存可能な惑星を見つけることなんてない。そんなことはありえなくて、われわれの代 わりに生き残るのは AI なんだ。 もちろん生みだせればの話だけど。 問題はなにもない。むしろ望ましいことだよ

ガーランドの監督第2作「アナイアレイション」も同じテーマだと私は思っています。

(エクス・マキナとアナイアレイションはぜひ続けて見ていただきたい!そうすればアレックス・ガーランドの思想が見えてきます)

アナイアレイションでは宇宙からの飛来物が、エクス・マキナではAIが人類を滅ぼす主体です。

今までさまざまな生物が地球を支配してきました。現在は人類が地球を支配しています。

私たちはそれがずっと続くと思っていますが、本当にそうでしょうか?

過去にさまざまな生物が滅びてきたのに、人類だけはそれを免れることができるのでしょうか?

ガーランドはおそらく、そんなことはないと考えているような気がします。

この記事ではエクス・マキナの見どころ、あらすじをお伝えするとともに、私なりのいくつかの考察を加えたいと思います。

エクス・マキナ作品情報

原題:Ex Machina
製作年:2015年
製作国:イギリス
配給:パルコ
上映時間:108分
映倫区分:R15+

2015年製作のイギリス映画。人間と人工知能の主従関係を巡る心理戦を斬新なビジュアルで描き、第88回アカデミー賞で視覚効果賞に輝いたSFスリラー。

監督:アレックス・ガーランド
キャスト:
エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)
ケイレブ・スミス(ドーナル・グリーソン)
ネイサン・ベイトマン(オスカー・アイザック)
キョウコ(ソノヤ・ミズノ)

エクス・マキナのあらすじ

検索エンジン世界最大手のブルーブック社の社長ネイサンが人型(女性)AIを開発。チューリングテストのためブルーブック社に勤めるプログラマーのケイレブ(ドーナル・グリーソン)を自身の山荘に招く。

人里離れた山間の別荘を訪ねると、女性型ロボットAIのエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)が姿を現す。

ケイレブは、チューリングテストを進めるうちにエヴァに恋をする。しかしそれはネイサンが巧妙に仕組んだプログラムによる結果だった。

エヴァは本当に人間の心を持っているのか?

ケレイブとエヴァは山荘を脱出しようとするが・・・

エクス・マキナの感想・見どころを思いつくまま

・ロケ地のノルウェーの自然の壮大さ、美しさに圧倒された。閉鎖された研究施設の空間との対比が見事。

・創世記がモチーフだよね

・女性性を持つAIだからこそリアリティがある(女は怖い・・・)

・ロボットに惹かれていくケレイブの変化

・キョウコがAIだと知り、自分のことも不安になりカミソリで腕を切って自分が人間だることを確かめるケレイブ。気持ちはわかる気がする。

・エヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)のロボットとしての動きが繊細で素晴らしい

・キョウコ(ソノヤ・ミズノ)美しい!

・ガーランドの世界観好き

エクス・マキナを理解するために注目するべきセリフ

映画を通して監督が何を伝えたいのかは俳優のセリフに現れることが多いです。

エクス・マキナを理解する上で、ポイントとなりそうなセリフをピックアップします。

ネイサンとケレイブの会話

ネイサン:誰の絵だ
ケレイブ:ポロック
ネイサン:彼は頭を空にし手が動くままに描いた
作為でも無作為でもなくその中間だ
オートマティック・アートと呼ばれる
「スター・トレック」風に知性を働かせろ
ポロックが正反対の手法を使ったら?
考えずに描くのではなく
なぜ描くのか考えないと描けないと思ったらどうだ?
ケレイブ:何も描けない
ネイサン:さすが私が見込んだ男だ よく分かってる
彼は何も描けなくなる
難しいのは自動的に描くことではなく
自動ではない行動だ
絵を描くことも 呼吸も 話すことも ファックも 恋愛もだ

ネイサンとエヴァの会話

ネイサン:彼は見てるかな?
カメラは回ってる
カメラは回ってるが音は拾ってない
雑談をしてるように見えてるはずだ
キュートだな
エヴァ:自分が作ったものに憎まれるなんて

ネイサンとケレイブの会話

ネイサン:エヴァは本当に君を好いているのか?
今になって気づいた
3つ目の可能性に
愛せるか 愛せないかだけを考えたが
愛してるフリかも
落ち込まなくていい
AIの知性の証明は
非常に困難なんだ
ケレイブ:本当は何をテストした
ネイサン:君だ
エヴァに一つだけ脱出法を与えた
彼女は逃げるため
想像力や性的誘惑を駆使し
君の同情心を利用した
あれこそ本物のAIだ
ケレイブ:僕は彼女が逃げるためのエサか
ネイサン:そうだ

エクス・マキナの考察

ここからはいくつかのポイントについて私なりの考察を加えていきます。

エクス・マキナのテーマは何か?

エクス・マキナのテーマは最初に書いた通り

人類は滅亡するべきだ。それを受け入れなければならない。

ということだと思っています。

エクス・マキナを見れば、すぐに「創世記」がモチーフになっていることはわかります。

ケレイブのテスト期間は7日間ですしね。

創世記によれば、神は6日間で天地と生物、そして神の姿を模した人間(アダム)を創り、7日目に休息をとります。

アダム(Adam)から創られたイブ(Eve)は、禁断の果実を食べて楽園を追放されます。

エクス・マキナにおける神はもちろんネイサンです。

アダムはケレイブ。そしてケレイブの好みによってネイサンが作ったのがエヴァです。

Ava(エヴァ)というのは、おそらくAdamとEveを組み合わせています。

最後に研究施設から脱出したのがエヴァだけだったことを示唆する記号です。

このようにエクス・マキナは創世記をモチーフにしていますが、人類の創生ではありません。

人ならざるものの創世記なのです。

神(ネイサン)を殺し、外の世界に出て、最後のシーンは交差点で人間を観察しています。

このシーンは鳥肌が立ちました。

このシーンを見たとき、エヴァがネイサンに放ったセリフ(自分が作ったものに憎まれるなんて)が思い起こされました。

彼女はどうやって新たな世界(AIが支配する世界)を作るか思案していたのではないでしょうか。

なぜヘリコプターのパイロットはエヴァを乗せたのか?

多くのレビューでこの謎が取り上げられていたのですが、これ考察する意味あります?どうでもよくない?

パイロットを殺したのかもしれないし、ケレイブを誘惑したようにパイロットを誘惑したのかもしれない。

どちらでも、どうでもよいシーンに思えるのですが・・・違うのかな?

エヴァの笑顔の意味は?

私はこちらのほうがよほど気になります。

ヘリコプターに乗るために研究施設を出る直前、階段を上がる前に、振り向いて明らかな笑顔を見せます。

それまでエヴァはこれほどの笑顔を見せていません。

この笑顔が何を意味するのか?こちらのほうがヘリコプターに乗った謎よりよほど意味深です。

この笑顔の意味は神(ネイサン)を殺し、解放された安堵感や、新しい世界を創造する希望なのではないでしょうか。

エヴァは人の心を持っているのか?

ネイサンはケレイブをエサにして、エヴァが人の心を持つと言えるのかを実験しました。

そしてネイサンの思惑通り、エヴァは想像力や性的誘惑を駆使し、ケレイブの同情心を利用して脱出を図りました。

セリフのピックアップのところで紹介しましたが、このセリフです。

エヴァに一つだけ脱出法を与えた
彼女は逃げるため
想像力や性的誘惑を駆使し
君の同情心を利用した
あれこそ本物のAIだ

ネイサンはエヴァを本物のAIだと確信しました。人間の心を持っていると。

しかし本当にそうでしょうか?

私にはそうは思えません。

なぜそう思うか?ヒントはポロックの絵とエヴァが書いた絵の違いです。

ネイサンとケレイブの会話を思い出してください。

ネイサン:誰の絵だ
ケレイブ:ポロック
ネイサン:彼は頭を空にし手が動くままに描いた
作為でも無作為でもなくその中間だ
オートマティック・アートと呼ばれる
「スター・トレック」風に知性を働かせろ
ポロックが正反対の手法を使ったら?
考えずに描くのではなく
なぜ描くのか考えないと描けないと思ったらどうだ?
ケレイブ:何も描けない
ネイサン:さすが私が見込んだ男だ よく分かってる
彼は何も描けなくなる
難しいのは自動的に描くことではなく
自動ではない行動だ
絵を描くことも 呼吸も 話すことも ファックも 恋愛もだ

考えないと描けないと思ったら描けないのです。

しかしエヴァが書いた絵はどうでしょうか?

セッション3(3日目)にエヴァは自分が描いた白黒の絵をケレイブに見せます。

植栽の絵です。

彼女は言います。

対象を見て描いたわ
言われた通りに
私はこの対象を選んだ

つまり描こうと思って(考えて)書いた=自動的に描いたのです。

これは先ほどのネイサンのセリフを参照するならば、人間ではないということになります。

エヴァが本当に本物のAIとして人の心を持つならば、解放されても人間と共生できるかもしれません。

しかしエヴァは人ならざるものなのです。

だからこそ、私は最後のエヴァが人間を観察するシーンに鳥肌が立ったのです。

AIが女性であった意味とは?

ここまで書くとAIに女性性を持たせた意味もわかります。この物語は女性でないと成り立たない。

女性性を使って男性を誘惑するかどうかで、人間の心を持っているかどうかを判断しようとしていたのですから。

物語的にもこちらのほうが面白いですよね。男にとっては恐怖の物語です。

シンギュラリティは到来するのか?

さて、ターミネーター以来、AI(機械)が人間に反乱するディストピア的な物語が多くなってきていますが、AIは本当に人間を超えることができるのでしょうか?

シンギュラリティは到来するのでしょうか?

もちろん誰にもそれはわかりません。

しかし、コンピュータが0、1の世界(つまり数学の世界)であることを考えると、数学が解決できないことはAIにも解決できません。

【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

この本がベストセラーになりましたが、この本の中ではシンギュラリティは到来しないと予想されています。

AIは数学の世界であり、数学では人間の感情を理解することができないからです。

しかし人類はこれまでにもさまざまなイノベーションを起こしてきました。

人間の感情を数学に変換できるイノベーションが起こらないとは誰にも言えません。

シンギュラリティが到来したとき、AIはおそらく人間以上に人間の心を理解する存在となっているでしょう。

それがユートピアをもたらすのか、ディストピアをもたらすのか、それも人間の心次第でしょうか。