前回のオープニング解説記事へ

ガタカ・シーン1の流れ.僕はジェローム・モローではない 4分~9分

ガタカ施設内のパンニングショットから始まります。無機質な印象を受ける内装です。

スーツに身を包んだたくさんのワーカーがエレベーターを昇っていく様子が映し出されています。

ローアングルで撮影されたエレベーターを昇っていく人物たちは、社会のエリートであることを示しています。

そしてカメラは主人公となるビンセントにズームインしていきます。

落ち着いた態度と自信に満ちた足取りです。

ジェロームと紹介された男は小さな掃除機を使ってコンピュータのキーボードの隙間を掃除します。

彼が自分のDNAの痕跡を消すためにやっていることはまだわかりません。

そして小瓶を開け、何やら振りかけています。

ビンセントの背後からガタカの責任者ジョセフが近寄ってきます。

ジョセフ:君は相当なきれい好きだな ジェローム
ジェローム:”清潔は信仰に似たり”と
ジョセフ:信仰か 飛行計画書にもタイプ・ミスひとつない 驚異的だ 土星へ飛ぶにふさわしい
ジェローム:打ち上げ延期の噂を聞きました
ジョセフ:心配ない 予定通り1週間後だ 薬物検査を

ジェロームと呼ばれる男が宇宙飛行士であり、1週間後に土星に向かうことが判明します。

このときのジョセフのセリフ「(君のような人間が)土星へ飛ぶにふさわしい」はビンセントの優秀さを(DNAが劣っているにも関わらず)強調しています。

ガタカ内でビンセントのポジションが語られています。

続いてシーンは検査室へ。

レイマー医師との会話です。

レイマー:自由自在に小便が出るね モノは実に立派だ
ジェローム:そればっかり
レイマー:職業病かな 毎日山ほど見るが 君のはズバ抜けて素晴らしい うらやましい限りだ ところで息子の話はしたかな?
ジェローム:いいや
レイマー:いずれ話す あと1週間で土星行きか ワクワクするだろ?
ジェローム:どうかな

ここで、「なるほど、最初に脚にセットしたアレは尿か」と気付きます。

尿サンプルが分析されると、コンピュータの画面に「ジェローム・モロー」という名前が表示されます。

名前の横には「VALID」(適正)の文字が。

どうやら身分を偽っているらしいことがわかってきます。

コンピュータの画面には無限大(∞)マークも表示されています。成功と無限の可能性を暗示していますね。

次のシーンはビンセントがガタカの窓から、地球を離れていく宇宙船を見つめているときに、アイリーンが近づいてきます。

アイリーン:おめでとう
ジェローム:どうも
アイリーン:毎日1ダースのロケットが空へ
ジェローム:もっとだ
アイリーン:数えてるのね 無関心を装うなら見てはだめ

そしてビンセントのナレーションが入ります。

(誰も驚きはしない 宇宙飛行士ジェローム・モローが 土星の14番目の月タイタンへ飛び立つ 難しい選考試験もジェロームにはたやすかった 彼は宇宙飛行士に必要な資質を 生まれつき備えている ジェロームにとっては何の快挙でもないが 僕はジェロームではないのだ)

ここで映画の冒頭シーンの意味が分かります。ここで一気に作品世界に引き込まれます。

ガタカ・シーン1解説

オープニングからシーン1にかけて、曲線と直線が印象的に対比されています。

直線

・ガタカのエスカレータ―で上る人々の列
・ビンセントが見つめるロケットの軌道

曲線

・オフィスの半円形のデスク
・ロケットを見つめる天窓の流線形

冒頭の引用「神が曲げたものを誰が直し得よう? 伝道の書」に何か関係がありそうです。

ちなみに、「神が曲げたもの」はビンセントのメタファーですよね。

「神が曲げたものを人間が触れるな!」つまり、遺伝子操作への嫌悪感を表出しているのではないでしょうか。

ところで、レイマー医師の「ところで息子の話はしたかな?」 このセリフが実はすごい伏線になっていたんですよね。この時点で伏線と思った人は少ないでしょう。

シーン2へ続く