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この記事ではガタカの86分~95分あたりのシーンを解説します。

①ジョセフ局長の逮捕の意味
②ビンセントとアントンの対決での名セリフ
③アイリーンとの最後の夜

この3点を中心に解説します。

86分~95分はセリフで見ると、次の部分です。

ヒューゴ:おめでとうございます 被害者の目から彼の唾液が出ました やはりあなたのカンが正しかった
アントン:マツ毛の男との関係は?
ヒューゴ:単独犯です 打ち上げ決行のために これを逃せば70年後だ もう注しはないのでスラスラと自供を 今夜は祝杯ですね?
アントン:もちろん

ユージーン:いい娘だ 混乱してたみたいだが
ジェローム:どんな男だ?
ユージーン:刑事? 普通だ
ジェローム:名前は?
ユージーン:名乗らなかった
ジェローム:また来る
ユージーン:事件は解決した
ジェローム:まだだ 会わなきゃ

アントン:ビンセント? 変わったな 弟を忘れたのか
ジェローム:弟?
アントン:まだ生きていたとは 驚いた
ジェローム:なぜここに?
アントン:俺のセリフだ 不法侵入はそっちだろ
ジェローム:何のことかな 僕は潔白だ 残念だな
アントン:身分詐称を 兄貴を助けたいんだ
ジェローム:苦労してここまで来た
アントン:十分だろ あきらめろ
ジェローム:ゴールはまだ先だ
アントン:終わりだ
ジェローム:なぜ邪魔をする 僕に何ができるか決めつけるな 僕は誰からの救いも求めてない おまえと違う 僕に救われたことをどう説明する?
アントン:無茶しただけだ
ジェローム:負け惜しみか
アントン:証明する
ジェローム:もういい 昔の話だ
アントン:証明する 証明してやるとも!
ジェローム:いいだろう

アントン:ビンセント ビンセント!岸はどこだ
ジェローム:やめるか?
アントン:遠すぎる
ジェローム:やめるか?
アントン:いやだ
アントン:ビンセント なぜだ 何のために? 戻ろう
ジェローム:もうすぐ反対側に着く
アントン:2人とも死ぬぞ
ジェローム:あの時と同じだ 戻ることは考えずに全力で泳いだ

アイリーン:見えなかったのね 道路を渡った時 でも渡れた
ジェローム:調べたければこれを
アイリーン:ごめん 風にさらわれた

①ジョセフ局長の逮捕の意味

ビンセントの元上司を殺害した犯人はジョセフ局長でした。

タイタンへの打ち上げをつぶさせないための犯行と説明されています。

これも遺伝子操作への大きな皮肉が込められています。

こちらの記事で解説しましたが、ジョセフ局長はヒューゴ刑事にこんなことを言っています。

「私のデータをよく見ろ 暴力性はないはずだ」

暴力性のない人間がパソコンのキーボードで人間の顔をメッタ打ちにして殺しているわけです。

暴力性どころか、残虐性十分でしょう。

「DNAデータだけを見ていて、何がわかる!?」という痛烈な皮肉であると感じます。

②ビンセントとアントンの対決での名セリフ

殺人犯がジョセフ局長であることは納得したものの、アントンはビンセントがDNAを詐称してガタカに潜り込んでいると確信しています。

オフィスのビンセントの席に座っているアントンのもとに、ビンセントが近づきます。

ビンセントとアントンは激しく言い争います。

お互いに、そこにいる正当性を問題にしています。

アントンが言います。

I have a right to be here.

「俺はここにいるべき人間だ(でも兄貴は違う)」というニュアンスでしょう。

(字幕では「不法侵入はそっちだろ」となっていますが。)

アントンは、なぜ不適合者であるビンセントがガタカにいられるのかわかっていません。

DNAがすべてを決めると信じているガタカが描く世界の人間であることがよくわかります。

しかし、本当にガタカにいる資格があるのはビンセントのほうでしょう。

DNAを偽っているのは、ガタカの世界のスタート地点に立つためだけであって、ガタカで優秀な社員でいるのは、ビンセントの努力によるものだからです。

このことがわからないアントンは何度水泳で勝負を挑もうともビンセントに勝つことはできないでしょう。

果たして、アントンはまたしても水泳勝負でビンセントに負けてしまいます。

このときのビンセントのセリフがガタカで言いたいことのすべてを物語っています。

「あの時と同じだ 戻ることは考えずに全力で泳いだ」

目の前のことに全力を尽くす。不可能と思えることも努力で克服する。遺伝的な欠点などより、人間の精神のほうがよほど重要だというメッセージです。

③アイリーンとの最後の夜

アントンとの水泳勝負の後、夜が明けたときに、ビンセントはアイリーンの車にもたれかかっています。

アイリーンは目を覚まし、丸いバックミラーに映るアントンに気付きます。

ここでも円形のミラーがポイントですね。

完全な円の中に映すことで、ビンセントの完全な努力を暗示しています。

ビンセントは1本の髪の毛を差し出し、「調べたければこれを」とアイリーンに渡します。

アイリーンは以前のビンセントと同じセリフを口にして、髪の毛を捨てます。

ビンセントの本質を理解して受け入れた瞬間です。

ビンセントはアイリーンと最後の夜を過ごし、タイタンへ旅立つことになります。

シーン15へ続く