前回のシーン15解説記事へ

さあ、今まで15回にわたって解説してきたガタカのシーン別解説もこれが最後です。

出発ゲートへ向かうビンセントですが、思いもかけないことに、最後にDNA検査が待っていました。

完全に虚を突かれたビンセントはジェロームのサンプルを用意していません。

絶体絶命のピンチにビンセントは覚悟しました。ところが・・・

レイマー博士にやられましたね!

いやー、「24season2」でも嫌な奴かと思ったらめっちゃナイスガイだったジョージ・メイソンそのままじゃないか!レイマー博士!

涙腺緩んだよ!

映画冒頭の息子の話がここにつながってくるか!とジーンと感動しました。

そしてレイマー博士がジェローム・モローの正体を知っていたということは、当然局長のジョセフも知っていたと考えるのが自然でしょう。

ガタカの最高責任者であるということは、DNAデータがすべてと考える官僚の中の官僚的存在のはずです。

そんな人物がビンセントの可能性に賭けていたかと思うと、さらに涙腺が緩みます。

ガタカとは全然関係ないけど、レイマー博士役のXander Berkeleyは24で共演したSarah Clarke(ニーナ役)と結婚したんですよね。

いや、どうでもいい話でした。

さて、最後のセリフを見ておきましょう。

ジェローム:これは?
レイマー:新規則だ どうした
ジェローム:問題が
レイマー:息子は君の大ファンでね
ジェローム:忘れないでくれ 僕は誰にも負けなかった
レイマー:ここに応募を
ジェローム:任務を完ぺきに果たしたはずだ
レイマー:(私の息子は)残念ながら遺伝子に問題が だが希望はある だろ?
レイマー:今後の参考に 右ききの人間は左手で持たないもんだ
レイマー:早く行け(ビンセント)

地球には居場所がないと思ってたのに 去るのがつらかった 命は宇宙の塵の中から生まれたという 僕は故郷へ帰るのかもしれない

ガタカにおける最大の謎について解説

ここではガタカ最大の謎に迫らなければなりません。

その謎とはもちろんジェロームの焼身自殺です。

なぜジェロームは死んだのか?さまざまな解釈がありますし、正解はないでしょう。

これについては監督のアンドリュー・ニコルも一切語っていません。

逆に言うと、自由に想像して楽しめるわけです。

では、僕の妄想解説をしてみます。

なぜジェロームは自殺したのか?

まず映画開始冒頭の引用を見て下さい。

Consider God’s handiwork;who can straighten what He hath made crooked? ECCLESIASTES 7:13
 
「神が曲げたものを誰が直し得よう? 伝道の書」

これを見た時点で「ああ、キリスト教がモチーフの一つね」と気づきます。

しかし、引用はもう一つ続きます。

I not only think that we will tamper with Mohter Nature, I think Mother wants us to. WILLARD GAYLIN

「自然は人間の挑戦を望んでいる ウィラード・ゲイリン」

冒頭で真逆の引用2つというのはなかなか珍しいのではないでしょうか。

最初の引用でキリスト教の影響を示唆していますが、2つ目の引用ではそれを否定しているようにさえ感じてしまいます。

2つ目の引用は、テクノロジーによって、母なる自然を人間の手で完璧なものにしなければならないという誘惑を暗示するとともに、僕にはキリスト教の価値観を否定しているようにもとれるのです。

キリスト教の価値観を否定するとはどういうことか?

時間の捉え方についてです。

西洋と東洋では時間の捉え方が異なります。

西洋(キリスト教)的時間の捉え方は、一直線に進む時間です。

つまり誕生してから死ぬまで一直線に時間は進むという捉え方です。

しかし東洋(仏教)的時間の捉え方は異なります。

時間は一直線に進むのではなく、循環する(輪廻)という捉え方です。

さて、ガタカでは、直線と曲線の対比がいたるところで行われます。

直線の代表はロケットの打ち上げや、冒頭でガタカの社員が一直線になってエスカレーターを進むシーンなどです。

一方、曲線もガタカの施設の中で多く描かれます。

ガタカでは曲線(円)は完全なものの象徴として使われています。

しかし、何度もガタカを鑑賞しているうちに、これらの円は「完全」の象徴であるとともに、「時間の捉え方(輪廻)」を象徴しているのではないかと思うようになりました。

そう考えると、ジェロ―ムが最後に焼身自殺する意味が見えてきます。

つまり、自殺ではなく、”生まれ変わり”を表現しているということです。

DNAで差別されることのない世界への生まれ変わりです。

なぜ優秀な遺伝子を持つジェロームがそう考えるようになったのか?

もちろんビンセントの影響です。

ジェロームはもともと死のうと思っていた

ジェロームは金メダルを取れず、周囲の期待を裏切った時点で死のうとしていました。

ビンセントがタイタンへ旅立つ日、最後のジェロームとの会話の中で、ビンセントが「どこへ行く?」とジェロームに聞いたとき、ジェロームは「旅に」と答えます。

少しシーンをさかのぼって、ビンセントがガタカへの就職が決まって、ジェロームとレストランでお祝いするシーンを思い返してみましょう。

ジェロームはこんなセリフを口にします。

「本を読んで頭の中で旅を」

ここでも”旅”という言葉が出てきます。

ジェロームにとって”旅”とは何でしょうか?

それは”死の世界”への旅立ちということでしょう。

ジェロームはずっと死に場所を探していたのです。

しかし、レストランのシーンでの”死”と、最後のシーンの”死”はジェロームにとって全く意味が異なります。

それは、最後にジェロームの銀メダルが金メダルに変わったように見えることからもわかります。

ジェロームは、ビンセントの夢の実現を手助けしたことで満足し、適正者の世界と不適正者の世界の両方で何が本当に重要なのかを悟りました。

遺伝子が運命を決めるのではなく、自分を信じる心こそが運命を決めるということに気付いたのです。

不適正者も努力で壁を超えられるし、適正者もDNAが優れているからといって、それだけで成功するわけではないことに気付いたのです。

これはジェロームが真の意味で成功を知ったということです。

レストランでの会話の時点では、ジェロームにとって”死”は現実世界から逃避することにすぎませんでした。

しかし、最後のシーンでの”死”は生まれ変わることを意味しています。

それを象徴するのが、焼却炉の中で銀メダルが金メダルのように見える描写だったのです。

タイタンが暗示するものとは

ビンセントは最後にこんなナレーションを入れます。

「僕は故郷へ帰るのかもしれない」

また、映画中盤でビンセントがガタカへ採用され、ジェロームとお祝いをするときに、ビンセントはこんなセリフを口にしています。

「無重力状態っていうのは 胎内に似てるそうだ」

つまり、タイタンは胎内を暗示しており、「タイタンへの旅=遺伝子で差別されることのない社会への回帰」を表現しているのでしょう。

ジェロームがビンセントに遺髪を託したのも、DNAで差別されることのない世界へ、「一緒に連れて行ってくれ」というメッセージだったのではないかと思うのです。

ジェロームは間近でビンセントを見てきて、DNAの壁を克服する姿に刺激を受けてきました。

DNAで差別されることのない世界で、ビンセントと勝負してみたいと思ったのかもしれません。

そのために死ぬ必要があったのです。

僕はジェロームがビンセントの夢を叶えたことで「自分の役目は終わった」と満足して自殺したとは思いたくありません。

最後にジェロームが焼却炉の中で銀メダルを眺めるシーンがあります。

あのシーンからは「もう一度挑戦したい!」という心の叫びが聞こえてくる気がします。

以上、ジェロームが自殺した謎に対する妄想解説でした。

ガタカシーン別解説記事一覧

1.オープニング

2.僕はジェローム・モローではない ~9分 

3.ビンセントの子供時代へフラッシュバック1 9分~15分

4.ビンセントの子供時代へフラッシュバック2 15分~18分

5.家族との訣別~清掃員としてガタカへ 18分~22分

6.アイデンティティの購入 22分~31分

7.ガタカへ&殺人事件 31分~35分

8.ジェロームの孤独 33分~35分

9.アントンの疑念 43分~48分

10.アイリーンとの接近 48分~50分

11.ビンセントの苦悩&アイリーンとのデート 50分~63分

12.ヒューゴ刑事の推理 63分~68分

13.アイリーンとの2回目のデート 68分~76分

14.アントンがジェローム宅を訪問 76分~86分

15.ビンセントとアントンの対決&アイリーンとの最後の夜 86分~95分

16.ジェロームとの別れ 95分~97分

17.レイマー博士の希望~宇宙へ 97分~ラスト