前回のシーン1解説記事へ

ガタカ・シーン2の流れ.ビンセントの子供時代へフラッシュバック 9分~15分

ビンセントのナレーションから始まります。

(僕はリビエラ生まれ フランスではなく車の”リビエラ”だ ”愛の結晶”として生まれる子は幸せ? 昔の話だ なぜか母は遺伝子学者より神にすべてを託した 昔は”健康体ならよし”などと言ったが 今や出生数秒後に推定寿命と死因が判明する )

画面はセピア調になり、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。

ビンセントの出産シーンにはロザリオと十字架がクローズアップされます。

そして看護師のセリフ

看護師:神経疾患の発生率60% 躁鬱病42% 注意力欠如89% 心臓疾患・・・99% 早死にの可能性あり 推定寿命は30.2歳

そのセリフにビンセントの父親が反応します。

父親:たった30年?
看護師:名前は?
母親:アントン
父親:いや ビンセント・アントン いい名前だ
母親:きっと何かやり遂げるわ

赤ちゃんに付けられた名前は「ビンセント・アントン」。この名前に大きな意味があるのです。

ビンセントは、ラテン語の動詞「Vincere」(征服する、勝つ)に由来しています。

これはあらゆる困難を克服して成功を得ることを意味すると同時に、アントン(ビンセントの弟)にも勝つという意味が込められていると思います。

ガタカはそれぞれの登場人物の名前に深い意味が込められていますよね。


次に、ビンセントの体の弱さ、社会から拒絶されている様子が描かれます。

母親:ビンセント!

(健康でないことは幼い頃に悟った かすり傷や鼻水ひとつで大騒ぎだ )

先生:学校では責任を負いかねます
母親:でも・・・
先生:申し訳ありませんが

ビンセントの両親は次の子供は”自然”な方法で生むことを決意します。

ガタカの世界ではテクノロジーによる操作こそが”自然”なのです。

(ビンセント:僕の両親は当然のごとく決意した 次の子は”普通の方法”で作ろうと)

医師:マリーさんの卵子がアントニオさんの精子を授精しました 健康な男子と女子が2人ずつ残っています 遺伝性疾病の要因はなし あとは選ぶだけです まずは性別から ご希望は?
母親:弟を作りたいんです 遊び相手に
医師:やあ ビンセント ご希望は薄茶色の目と黒髪と白い肌 有害な要素は排除しました 若ハゲ 近眼 酒その他の依存症 暴力性 肥満
母親:もちろん病気は困りますが
父親:ある程度は運命に任せるべきでは
医師:子供の幸せのためです 性格的な欠点で十分 ハンデは無用です お2人の子供です しかも最高の 1000人に1人の傑作です

こうして弟のアントンが誕生します。

(ビンセント:それが弟のアントンだ 父の名を継ぐにふさわしい息子)

弟のアントンが身長を測った後、ビンセントが柱に描かれた自分の身長の記録を消します。

この柱に描かれた線によって、はしごのように見せています。

DNAの分子が、らせん状のはしごになっていることをイメージさせます。DNAのはしごにおいて、ビンセントよりアントンが上だと示しているのです。

ビンセントが身長の記録を消す行為は3つのことを暗示しています。

①自分の置かれた状況を拒否する強い意思
②自己嫌悪(両親への恨みもある?)
③自分を消して他の誰かになる


このシーンに続くのが、ガタカにおいて最も重要なシーンと言える海での競争です。

(”血の契り”を結ぶ年頃には弟との違いを痛感していた その差は決して縮まらないことも 僕らはよく両親の目を盗んで度胸比べをした 先に引き返すと負けだ)

アントン:臆病者
(ビンセント:負けるのはいつも僕だ 体力で勝る弟が先にバテるはずはない)

なぜ水泳なのか?

後に出会うジェローム・ユージーン・モローも水泳の選手でした。

つまり同じ物差しで評価しているのです。

子供の頃のアントンはビンセントよりも上、ジェロームはさらに上。

この時点でのヒエラルキーを示しています。


次に、ビンセントの宇宙への夢が語られます。

ビンセント:5億キロ 6億キロ・・・13億7000万キロ

(ビンセント:星への愛情か地球への憎しみからか 物心ついた頃から宇宙飛行士を夢見ていた

アントン:宇宙飛行士は何人? 僕なら絶対なれる
ビンセント:食べるなよ 冥王星だ

ガタカ・シーン2の解説

ビンセントとアントンの違いが様々な工夫によって描かれています。

身長の測定や海での競争はもちろんですが、光の使い方によってもアントンとビンセントの違いが表現されています。

ビンセントは淡い夕暮れの海で生まれています(正確にいうと受胎?)。

一方、アントンが最初に登場する身長を測るシーンでは明らかに照明が変わり、光が強まります。アントンは輝く光を浴びているのです。

この光の対比によってビンセントとアントンの違いが無意識のうちに見る者の心に刻まれます。

また、ガタカのモチーフのひとつが”海”ですが、これは自然を意味しています。

ビンセントが海辺で生まれているのは、ビンセントが自然の産物として表現されているのです。

さらにビンセントの出産シーンではロザリオと十字架がアップになります。これは神の子として「神が曲げて作ったもの」を表現しているのでしょう。

生まれた後は、ビンセントがいかに社会に適応できない存在かということが、これでもかというくらい描かれます。

  • 看護師のセリフ
  • 幼児だったヴィンセントが転んで母親が慌てて駆け寄るシーン
  • 保育園に入園を拒否されて鉄格子の門がを閉められるシーン
  • 両親が遺伝学者(医者?)を訪ねて遺伝子操作をしているシーン

その原因はDNAにあるわけですが、それを示しているのがビンセントがおもちゃで遊んでいるシーンです。

DNAの模型みたいなおもちゃで遊ぶシーンがありますよね。

これは遺伝子をおもちゃのようにもてあそぶことへの強烈な皮肉です。

最初の海での競争では、アントンが”血の契り”を拒否しています。同じ血を引く兄弟であることを否定しているのです。

アントンが弟よりも身体能力が高く、力強く前を泳いでいる様子が描かれ、遺伝子の壁の大きさを強調しています。

シーン3へ続く