コングレス未来学会議の感想とネタバレ解説です。

この映画、完全にハリウッドに喧嘩売ってますよね?

自由すぎますよね?

はじめて見て最後までついていけた人って相当な映画マニアですよね?

もう斬新すぎます。

僕は最初見たとき、アニメパートに切り替わって30分後くらいに置いてけぼりにされましたが、2回見て、なんとか解釈しました。

この映画のテーマは「現実と虚構」です。

そのことが次の3つで表現されます。

①実写とアニメーション
②生身の女優とCG女優
③現実のディストピアと脳内バーチャルユートピア

これらを通して、監督のアリ・フォルマンが言いたかったことは次のようなことだと僕は解釈しました。

映画が現実性(リアリティ)を失い、虚構化が進んでいることへの不満

では、作品情報、あらすじ、見どころ、解説(アリ・フォルマンは何を伝えたかったのか?)という流れで、コングレス未来学会議の魅力をお伝えしたいと思います。

(※すでに視聴された方はあらすじを飛ばしてください)

テーマはさっきも言った通り、「現実と虚構」だと思うのですが、斬新すぎてうまく言語化できるかどうかわかりません。大丈夫かな?

コングレス未来学会議 作品情報

2013年/イスラエル、ドイツ、ポーランド、フランス、ベルギー、ルクセンブルク/120分
監督・脚本:アリ・フォルマン
原作:スタニスワフ・レム
撮影:ミハウ・エングレルト
音楽:マックス・リヒター
出演:ロビン・ライト/ハーヴェイ・カイテル/コディ・スミット・マクフィー/ポール・ジアマッティ/ダニー・ヒューストン/ジョン・ハム(声)

「戦場でワルツを」のアリ・フォルマン監督。主演は「フォレスト・ガンプ」でジェニー役を演じたロビン・ライト。「ブレードランナー 2049」にもジョシ警部補で出てましたね。

原作はスタニスワフ・レムの「泰平ヨンの未来学会議」。原作とは大きく変わっていますけど。

そしてロビン・ライトが映画の中で落ち目のロビン・ライト役を演じるという自虐っぷりを発揮しています。

コングレス未来学会議予告

コングレス未来学会議 あらすじ

落ち目の女優ロビン・ライトはミラマウント映画のジェフから、データをスキャンしてCGキャラとして契約するよう迫られます。

映画に出演し続ける権利を売るというオファーをミラマウント重役及びハーベイ・カイテル演じるエージェントから受けます。

既に40代半ばになり輝きを失った女優をCGによって永遠に若い状態を保ち、それまで出演しなかったジャンル(SF)の作品に出演させるという契約です。

しかしその契約をすると、以後実際に演技することは許されません。

女優のアイデンティティーを売れということです。

はじめは拒否しますが、息子のアーロンの難病の治療もあって、この契約を受けざるを得ない状況となります。

契約を結んだ生身の女優であるロビン・ライトはモーションキャプチャーのスキャンによりバーチャルなCG女優としてデータ化され、SFアクションのヒロインとして人気を博します。

そして契約が終了する20年後。

ロビン・ライトは契約延長のためミラマウント映画の未来学会議に招待されます。アブラハム・シティという都市のミラマウントホテルが舞台です。

アブラハム・シティはアニメゾーンという設定になっていて、ある薬を吸うことで世界がアニメ化します。

なのですが、ここは『ロジャー・ラビッド』のトゥーンタウンようなアニメゾーンという設定で、60代半ばになった老齢のロビン・ライトは薬を吸ってアニメキャラとなって入場します。

アニメといっても子供向けではなく、かなりサイケな世界観です。

この未来学会議で行なわれるのは、ミラマウントが開発した、飲むと登場人物自体に変身可能になるというドラッグのプレゼンです。飲むとロビン・ライトになれるということです。そのための契約に呼ばれたということでしょう。

つまり、20年後のハリウッドではCGすら不要で、ドラッグを飲むことで登場人物になるというバーチャル体験ができる世界です。

そんな脳内麻薬を使うことに抗議する反対派がミラマウントホテルを攻撃します。

ロビンはその際に幻覚ガスの被害を受けてしまい、幻覚と覚醒を繰り返します。治療不可能と診断されて、治療可能な時代がくるまで凍結されてしまいます。

凍結されてからさらに20年後。

世界はミラマウントの革命的ドラッグが蔓延し、人々は薬でキリスト、ブッダ、マイケル・ジャクソンなど、なりたい人物になって生きることができるユートピアとなっています。

もちろん脳内バーチャル体験です。実際はドラッグによって廃人同然となっています。

ロビンはこのバーチャルユートピアの世界で息子のアーロンを探しますが、どうやらこの世界にはいないようです。

ドラッグに頼ってユートピアに行くことを嫌って、今も現実世界(ディストピア的に描かれる)にいるようです。

ロビンは現実世界に戻ることを決意します。

ここで実写に切り替わりますが、現実世界の人々は魂がない抜け殻のよう。

マトリックス的な世界観が描かれています。

現実世界に戻ったロビンは息子を診てもらっていたかかりつけの医師に会いに行きます。

そこで半年前に息子がバーチャルユートピアに行ってしまったことを知ります。半年の違いで行き違いになったのです。

ロビンは再度バーチャルユートピア的な幻想社会に戻ることを決意します。

しかし、この世界はドラッグによって自分の脳内で作り出す世界ですから、以前と同じ世界に戻れるかどうかはわかりません。

それでも彼女は薬を飲んでアーロンに生まれ変わります。

最後のアニメーションはアーロンの視点で描かれています。

ロビンである自分からアーロンになった自分が産まれるという幻想を生み出します。

なるほどアーロンの視点を追って行けば、彼にたどり着けますからね。

アーロンはどうやら母親が凍結されて目覚めないことに絶望してドラッグを飲み、バーチャルユートピアに行く決意をしたのかもしれません。

そして最後はアーロンとして母親であるロビンと再会してエンドロール。

コングレス未来学会議 見どころ

①冒頭でアルがロビンに説教するシーン

冒頭、ロビン・ライトのマネジャーであるアル(ハーヴェイ・カイテル)がロビン・ライトに諭す場面のシニカルなことシニカルなこと。

実際に落ち目と言えるロビン・ライトを目の前にして、映画内で落ち目とディスるという・・・

こんなセリフをロビンの心に突き刺します。

君が女優になって25年
私はいつだって隣で支えてきた
君の問題は
ろくでもない選択しかできないことだ
出演作 つき合う男
信頼できない友人

ちなみに、この「ろくでもない選択しかできない」というセリフは割と重要な伏線になっています。

②ロビンの自宅でCG女優の演技を見るシーン

本当の人間が演じてるようにしか見えませんが、実がバグがあったりするのです。

③アニメに変わるシーン

斬新すぎる 自由すぎる すごすぎる

④虚構のユートピアから現実のディストピアに戻ったシーン

マトリックス的な香りがします。

⑤最後のアニメシーン

再度バーチャルユートピアに戻ったシーンではロビンは息子のアーロンとして生まれ変わります。

このラストだと母親の愛ということをテーマにしたのかとも思えますが、僕は違うと思います。

コングレス未来学会議 解説 アリ・フォルマンは何を伝えたかったのか?

いろいろ考えさせられることはあるんですよね。

●アイデンティティの問題とか

●老いの問題とか

●母親の愛とか

●現実と虚構(現実のディストピアか虚構のユートピアか)みたいなこととか。

でも僕が感じたのは次のことです。

映画が虚構化していくことへの不満!

いや、言い方がおかしいか。映画は虚構なんですけど、何と言うか、黒澤明みたいな「リアリティへのこだわりがないのは許せん!」的なことを伝えたかったのではないかということです。

黒澤明は和室のシーンで画面には絶対に映らない箪笥の中身にまで気を配っていたそうですからね。

アリ・フォルマンの映画が映画でありながらドキュメンタリーのように感じてしまうのは、リアリティにこだわっているからではないでしょうか。

この映画を見て最初に感じたのは、「ハリウッドに喧嘩売ってるな(笑)」ということでした。

冒頭、アルと弁護士がロビンの自宅でテレビを見るシーンがありますが、そこではCG女優が演技しています。

まるで本人が演じているように。

これはハリウッドの現状をデフォルメしたわけではなく、実際にそうなのです。

アンジェリーナ・ジョリー主演の「ウォンテッド」という映画ではアクションシーンはCGで動かしていたそうです。

現場で撮影したわけではないんですね。

そんな映画にリアリティがあるのか!ということを、アリ・フォルマンは言いたいのではないかと。

だから、コングレス未来学会議のアニメはCGではなく「手書き」です。

これもハリウッドへの当てつけとしか思えません。

作品の最後に飛行船の中に赤い椅子が出てくるじゃないですか。

あれって完全に2001年宇宙の旅のオマージュです。

この頃のハリウッドは良かったという回顧ではないでしょうか。

昔はよかったけど、今のハリウッドは道を見失っている!

ハリウッドよ!映画をなめんな!

アリ・フォルマンが言いたかったのは、こういうことじゃないかな~というのが2回目の視聴を終えて思うことです。